日本で生まれたスキューバダイビングのギネス世界記録「姉妹二人で合計211m」。挑戦の舞台裏
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テクニカルダイビングに特化した日本のSSI XR(エクステンデッドレンジ)トレーニングセンター「スティングレイ・ジャパン」に所属するXRインストラクタートレーナーの鈴木雅子・智子姉妹が、「姉妹(女性)によるスクーバダイビングの合計最大深度」の部門で211 m(692 ft 3 in)という記録を、2025年10月1日に日本(和歌山県)で達成し、ギネス世界記録に認定された(雅子氏は106m、智子氏は105mを2人で同時に潜り、その合計が211mとなった)
この挑戦の裏側には、綿密な計画、安全管理、ダイビングや海に対する情熱、そしてチームの存在がある。本記事では、当日の水中でのプロセスからチーム体制、挑戦成功への思い、そして次なる挑戦までを、鈴木姉妹へのインタビュー形式でお伝えする。
ギネス世界記録の認定証とともに
鈴木姉妹:ギネス世界記録に挑戦したきっかけは、日本のダイビング業界に何か明るい話題を作りたかったからだ。特にギネス世界記録は、ダイバー以外の人でも知っているだろう。しかし当初は、「姉妹で同時に潜る」というジャンル自体がギネス世界記録には存在しなかった。そこで私たちがギネス側に提案し、審査ルールや提出書類のガイドライン作成を含め、約1年をかけて新たな項目として整備してもらった。
鈴木姉妹:テクニカルダイビングは「チームで潜る」ことが大前提だ。水深100mは、各教育機関のトライミックスコースで到達し得る節目でもある。そこに5mを上乗せすることで、コースで学んだ内容を基に、自分たちの責任と判断で限界を広げていくという意味を明確にした。また、ギネス世界記録には単独でのダイビング記録がいくつかあるが、私たちが目指すのは「チームでのダイビング」であるため、姉妹二人で挑戦することにした。
鈴木姉妹:特別なことは何もしていない。普段から積み重ねてきた基礎を、丁寧に、確実に。同じことを当たり前のようにやり遂げるだけだ。SSIをはじめとする各指導団体のカリキュラムには、最新の理論と実践の知見が凝縮されている。体系的な学びを正しく結びつけ、現場で活用することが何よりも重要だと感じている。
鈴木姉妹:オープンサーキットで、メインはヘリウムを含むトライミックスだ。減圧用に複数のガスを用意し、計5〜6本携行した。ドライスーツ用の独立ガスも準備している。予備ガスはサポートダイバー側にも配置し、万全の体制を確保した。
目印となるロープもすべて入念にチェックする
水中では、呼吸ガスなど必要なすべての器材を、予備分も含めて各自が携行する。
今回の挑戦の舞台となる和歌山県海域に精通する、現地のSSIダイブセンター「ダイブクーザ」代表の上田直史氏と共に潜水エリアを確認し、前日には下見も行い、準備を整えた。
ダイビングプランは、バックアッププランも含めて入念に立てる
鈴木姉妹:ボトム(水深105m)に降りたのは私たち2人と、スティングレイ・ジャパンの代表でありSSI XRトレーナーの野村昌司だ。野村自身は過去に水深122mを経験している私たちの師匠であり、今回は監督兼証拠映像撮影者として一緒に潜った。サポートダイバーは3名で、ダイブクーザ代表であり、テクニカルダイビングチームのメンバーでもある上田直史さん、JCS(日本海中技術振興会)会長の佐川純さん、そしてこれまで私たちのもとで特殊環境下でのサポート経験もある商業ダイバーでありチームメンバーの山口浩人さんが立ち会ってくれた。皆様からは心強いサポートをいただき、本当に感謝している。
鈴木姉妹:水深90m前後まではこれまでも数回経験があるが、率直に言って、水深100mは「遠い」と感じた。陸上の「100m」と聞くと比較的馴染みのある距離や高さだが、海中の「100m」は全く異なる。水圧の上昇でガスの消費が早まり、水温の低下や視界の変化、浮力・器材への負荷が重なることで、その「距離」は体感的に何倍にも広がってしまうのだ。しかし、今回の舞台である和歌山・古座沖は、白い砂地が広がる美しい海底で、当日は透明度も高く、これまで経験してきた「暗く沈む深淵」とはまた違った世界が広がっていた。
水深105mに向けて潜降中(写真は水深68m)
鈴木姉妹:水深105mまでは6〜7分で到達し、ボトム(水深105m)に到着するやいなや、ギネス世界記録用の証拠写真を撮影した。ちなみに、その時の映像を見返してみると、私たち、かなりおしゃべりしていた(笑)。ボトムに到達した時は、やはりそれだけ嬉しくて、高揚していたのだと思う。
水深105mに到達!透明度は良いとはいえ、やはり自然光はわずかだ
海底では約4分間滞在し、浮上は水深63mから3m刻みで減圧停止を行った。最後の減圧停止を終えて水面に顔を出した瞬間、明るい光に照らされ、チームメンバーの顔を見た瞬間、張り詰めていた緊張がふっと解けていくのを感じた。計画通りに進んだという大きな達成感と同時に、ダイブコンピュータのログやガス残量、体調チェックを淡々と確認し合い、チーム全員で無事であることを分かち合った。潜水の合計時間は約105分だった。
水面で「おかえり!」と声をかけてくれたサポートメンバーの笑顔を、これからもずっと忘れない!
鈴木姉妹:約20年前、私たちは水泳の経験がほとんどない状態でダイビングを始めた。当初は水に対する抵抗感が強く、技術的にも苦手なことが多く、上達するには本当に多くの時間が必要だった。そんな私たちをテクニカルダイバーとしてここまで育ててくれた野村には、感謝の気持ちでいっぱいだ。また、今回の成功は、当日に直接関わってくださった方々はもちろん、日頃からお世話になっている各地の現地サービスや関係者の皆様、応援してくださるダイバーの方々、そして私たちの挑戦を支えてくれた仲間たちの力があってこそ実現した。挑戦成功後は、多くの方が自分のことのように喜んでくださり、とても感慨深いものがあった。
サポートメンバーと共に成功を祝おう!
そして今回、一歩ずつ積み重ねていけば、確実にできることが増えていくことを実感した。テクニカルダイビングには「怖い」「敷居が高い」という先入観が先行しがちだが、正しい学びや準備といったステップを一つずつ積み重ね、忍耐強く継続できれば、年齢や性別に関係なく楽しめる分野だ。私たちも、その道筋をこれからも示していきたい!
鈴木姉妹:今回は自分たちの潜水領域を広げることに焦点を当てた。今後は、これまで行ってきたトライミックスを活用した深海での生物観察や、沈没船などの記録・調査にもさらに力を入れていきたい。私たちは「日本」のテクニカルダイビングフィールドが大好きだ。もちろん世界中には素晴らしいフィールドが数え切れないほど存在すると考えるが、日本にも素晴らしいテクニカルダイビングフィールドが数多くある。だからこそ、テクニカルダイバーが国内でもっと楽しめるようなテクニカルダイビングフィールドを増やしていきたいと、ずっと考えているのだ。そのためにも、今回のギネス挑戦のように、国内での挑戦と情報発信を今後も続けていきたい。
大切なのは継続することだ。これからもテクニカルダイビングの価値や魅力を、写真・映像や講演などを通じて丁寧に共有し、正しい知識と準備さえあれば誰でも挑戦できることを示していく。その実例を積み重ねていく。
2026年2月のSSIセンターミーティングで、チャレンジの成功を祝おう!
── 雅子さん、智子さん、ありがとうございました。改めて、この度はおめでとうございます!今後の活動も楽しみにしています。
水深105mという数字の背後には、綿密な計画、安全管理、ダイビングや海に対する情熱、そしてチームの存在があった。ギネス世界記録の達成はゴールではなく、テクニカルダイビングの未来へと続く通過点だ。スティングレイ・ジャパン・鈴木姉妹の挑戦は、次なる一歩を踏み出すダイバーたちの背中を、静かに、しかし力強く後押ししてくれるはずだ。
▶︎ギネス世界記録公式ページ
スティングレイ・ジャパンは、神奈川県伊勢原市を拠点に活動するSSI XRトレーニングセンターだ。テクニカルダイビングをはじめとするアドベンチャーダイビングなど、より高度で専門性の高い分野を提供している。ダブルタンクやサイドマウント、ディープ、沈船ダイビングや洞窟ダイビングなど、多くのダイビングスタイルに対応しており、インストラクター自身も常に現場で潜り続けることで、最新の知識と技術を確実に提供できる体制を整えている。具体的な目標を持つダイバーや、さらに深く海の世界を探求したい人々を、技術面・安全面からしっかりとサポートしている。
▶︎詳細は公式サイトをご覧ください
▶︎スティングレイ・ジャパン Instagram
▶︎鈴木姉妹 Instagram
▶︎野村昌司 Instagram
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